理(ことわり)

2018.03.14

和倉温泉から七尾湾を右手に望みながら北上し、ローカル線の小さな踏切を渡った所で、西に進路を変えた。するとすぐに緑深い山々が目の前に広がった。

目的地は、古来から伝説が残る山に湧く泉。

麓で能登半島に見られる黒光りする瓦の門を超えると空気が変わる瞬間があった。息を大きく吸って、時間をかけて静かに吐く。

澄んだ空気を体に満たして山道を進む。神聖な境界線を超えながら山の奥に入っていくと目の前には苔に覆われた参道が延々と山の上に続いている。しばらくいくと目的地の泉が森に守られるように姿を表す。

透明な水を蓄えた泉は、水中の苔の揺らめきと水面に反射して写り込んだ緑の「もりびと」が揺れていた。